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地下組織の工作員、ハリー・デクスター・ホワイト

パブロフの指令を受けて積極工作を実行した シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー①

 須藤氏の『ハル・ノートを書いた男』はNHKが番組収録のために行ったパブロフのインタビューを詳しく載せているので、ぜひ読み比べてみてください。

ケインズ(右)とホワイト(左)

 ホワイトはボストン生まれで、高卒でいったん社会に出てから第一次大戦に従軍し、帰国後にスタンフォード大学で学びました。その後ハーバード大学で経済学を学んで博士号を取っています。

 一九三四年に財務省に就職し、国際財政の専門家として頭角を現し、モーゲンソー財務長官の信頼を得て事実上のナンバー・ツーに登り詰めました。
ホワイトはモーゲンソー財務長官の懐刀【ふところがたな】として重用されました。

 モーゲンソーはホワイトに財務省代表として他の省庁との調整にあたらせ、第二次大戦中に作られた戦時諜報局(略称OSS。CIAの前身。各戦線の情報収集や分析、諜報活動などを担当した)の企画グループにも財務省を代表して参加させています。

 学歴や公的な経歴を見る限り、ホワイトはエリート街道まっしぐらの俊秀そのものです。エコノミストとして世界的な影響力も持っていました。一九四五年に創設された国際通貨基金(IMF)は、ホワイトの提案に基づいて組織されたものです。

 その一方で、ホワイトは政府内の共産党地下組織で活動していました。
共産党員ではなかったので、『ヴェノナの秘密(The Venona Secrets)』(p.31)はホワイトを「非党員ボルシェヴィキ」と形容しています。
同書の定義によれば、非党員ボルシェヴィキとは「共産党員と同様にアメリカ国内でのソ連の勝利のために献身するが、個人的な理由で完全な党籍は取らなかった者」を意味します。

 元共産党員のウィテカー・チェンバーズは、一九三五年から一九三八年まで政府内地下組織とソ連の軍情報部との連絡係を務め、その地下組織にホワイトがいたと証言しています。ホワイトは党員ではないので党費は納めていませんでしたが、財務省の機密情報をチェンバーズに渡していました。

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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